『工作 黒金星と呼ばれた男』あらすじと感想。知られざる物語を明かす人【ネタバレあり】
『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』見ました。
名作です。
『スポットライト 世紀のスクープ』『ローグワン』が好きな人におすすめ。
作品を見なければ決して抱くことのなかった気持ちを知れるのが、いい映画のいい映画たるゆえんですね。
冒頭でこの作品はフィクションであると示されるのが辛いですが、だからこそこの作品は未来への希望を背負っているような気がします。この作品はこれから誰かの心に強く影響を与えていくんじゃないだろうか。
『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』といい、『神と共に』といい、今年は次々と面白い映画に出会っています。
あらすじ
パク・ソギョンは韓国の情報部隊、国家企画部に所属している。
北朝鮮の核開発状況を探るため、ビジネスマンに扮し北朝鮮と韓国をまたがる広告事業を展開していく。
スパイである彼は、コードネーム黒金星(ブラック・ヴィーナス)として活動を続ける。
北朝鮮に潜入したスパイが次々と失踪していくなか、パク・ソギョンは北朝鮮の外交官リ・ミョンウン所長の信頼を得る。
広告事業を共に進めていくうちに、リ・ミョンウン所長の願いは北朝鮮の経済を好転させることだと分かる。パク・ソギョンは彼の人柄や思いを知るうちに、なぜスパイとして生きているのかを自らに問うようになる。
パク・ソギョンとリ・ミョンウン所長による共同事業が進んでいくなか、韓国では大統領選挙の時期を迎えていた。
パク・ソギョンが所属する国家安全企画部と敵対する野党候補者キム・デジュンの当選が最有力視されている。
キム・デジュンが当選すれば、国家安全企画部は潰されてしまう。
国家安全企画部の上層部、パク・ソギョンの上司はキム・デジュンの当選を阻止するため、北朝鮮と談合しある工作を行おうとしていた...
歴史を超えて信念を分かち合う人たち
まず、『工作 黒金星と呼ばれた男』を見るまえに町山智浩さんによる解説を読むことをおすすめします。
事前に読んでなかったら映画前半の展開がわりとまどろっこしく感じるかもしれません。
今作は北朝鮮の高官と韓国のスパイの間に芽生えた友情が描かれた物語です。
生まれた国や文化が違っていて過ごした時間も短いのに、なぜかお互いに好感が持てる人、会ったばかりなのに妙に馬が合う人、考えを分かり合える人というのは存在するんですよね...。
北朝鮮の高官リ・ミョンウンと韓国のスパイパク・ソギョンは人間としての相性が最高に良かったんだろうと思います。
生まれも育ちもまったく違うのに成長の過程で"浩然の気"という言葉を知り、それを身にまとって生きてきた男たちが出会ったのです。
その二人を表現するイ・ソンミン(リ・ミョンウン所長)とファン・ジョンミン(パク・ソギョン)がすごいです。
二人ともいわゆる『抑えた演技』なのに、最高のファイトをされてます。
ラストシーンに唸った。
『工作』のようなラストシーンは今まで見たことがありませんでした。
こういう形の映画って他にもあるんですかね...。
この作品の終わり方は、ある意味一つのジャンルを作ったくらいの発明だと思います。
たまむすびでも町山智浩さんが言っていましたが、これで泣かされるのかという驚きあり、そう思うことでさらに泣けてくるというすごいシーンでした。
骨太のいい映画が見たい人におすすめです。