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『メメント』あらすじと感想。誰も信じてはならぬ【ネタバレあり】ノーラン企画⑤

クリストファー・ノーラン第2回監督作品『メメント』見ました~。

まー難しかったです。

だがしかし冒頭の時間が巻き戻しされるシーンでは鳥肌が立ちましたね。

監督、20年も前から時間を巻き戻しする話が作りたかったんや..............と。

 


メメントでは作中人物は通常方向の時間で生きています。

しかし映画の脚本が結末から始まり、ストーリーが結末から中盤に向かってちょっとずつ巻き戻って再生されるという手法になっています。

 


テネットではそもそも作中に時間巻き戻し装置が登場し、登場人物たちが巻き戻し中の世界を爆走するというマジで頭が混乱するストーリーが映像化されています。

 


何を言っているのか分からないと思うのですが、きっと作品を見ても分からないのでホントにクリストファー・ノーラン監督は一体なんでそこまでして時間を巻き戻したいのか教えてほしいです。

なんで、なんでそこまでして時間を巻き戻ししたいんですか..........

 


あらすじ
(出典:https://www.youtube.com/watch?v=vTnEPAl7GPk

 


主人公レナードは妻を暴行殺人した男に殴られ、10分しか記憶が保たない記憶障害になってしまう。

全身に入れ墨をしスナップ写真にメモを取ることで少しずつ情報を集め、妻を殺した犯人を捕まえようとする。

 


彼の前にはテディ、ナタリー、ジミーという男女が現われる。

誰がレナードを利用し彼を騙しているのか全く分からない状態のなか、自分が残したメモだけを頼りにレナードは犯人を追い詰めていく。

 


クリストファー・ノーラン監督をテネットする

 


エイガジェルでは『クリストファー・ノーラン監督をテネットする』という題で、クリストファー・ノーラン監督のオブセッションを探る企画を絶賛進行しています。

[memo title="ちなみにオブセッションとは"]「妄想、脅迫観念」の意味。古くは悪魔や悪霊による「憑依」の意味ももつが、現代では「時に不合理とわかっていながらある考えや感情がしつこく浮かんできたり、不安なほど気掛かりになること」という精神医学・心理学的な精神の乱れを指す。

(出典:現代美術用語辞典 1.0)[/memo]

 


企画は、以下7作を

フォロウィング(1998)

メメント(2000)

プレステージ(2006)

インセプション(2010)

インターステラー(2014)

ダンケルク(2017)

TENET テネット(2020)

以下の順番で見ていくことで

↓④フォロウィング(1998)

↓⑤メメント(2000)

↓⑥プレステージ(2006)

インセプション(2010)

↑③インターステラー(2014)

↑②ダンケルク(2017)

↑①TENET テネット(2020)

「挟み撃ち作戦でノーラン監督のオブセッションを探っていくぜ」というそういう心意気のものです。

第一回『TENET テネット』について書いた記事はこちらから見れます。

第二回『ダンケルク』についてはこちら。

第三回『インターステラー』についてはこちら。

第四回『フォロウィング』についてはこちら。

 


監督挟み撃ち作戦:現在の状況

 


現在は

第一回『TENET テネット』の考察

第二回『ダンケルク』の考察

第三回『インターステラー』の考察

第四回『フォロウィング』の考察

が終わっている状況です。

 


テネットでは

時間
夫婦
SF

ダンケルクでは

時間
命の選別
明かされない真実

インターステラーでは

時間
親子
命の選別
死を選択する
世界を救う

フォロウィングでは

権力者に支配される女
時間
人間の裏と表
名前のない登場人物

が監督のオブセッション候補として出てきました。

それを踏まえてメメントの考察に入りたいと思います。

 


ちなみに

 


筆者はノーラン監督作品のうち、

バットマンシリーズ
メメント
インセプション
インターステラー
ダンケルク
TENET テネット
フォロウィング

を鑑賞済です。

※筆者が鑑賞済みの作品の内容にも言及していきますのでご注意ください。

 


メメントから見えてくる監督のオブセッション

 


権力者に支配される女

 


ナタリーはレナードと同じく恋人を殺された女性として登場し、レナードの犯人捜しに協力してくれています。

しかし彼女はマフィアのボスジミーの恋人で、顔には殴られた痕がありました。

この『マフィアの恋人』というキャラクターはテネット、フォロウィングでも登場しており、監督が繰り返し描いているものの一つです。

 


美しい女性が権力者に支配されること
権力者が美しい女性を支配すること

監督はそのどちらにも比重を置いて描いているような気がします。

テネットとフォロウィングで共通していたのは、『女性は権力者の元から逃れようとして主人公はそれの手助けする』構図ですね。

メメントではまた少し変わってきますが。

 


時間

 


『映画の終盤でやっと何をやっているのかが何となく分かる映画』こと、メメント

『映画の終盤まで謎が解き明かされない&集中して見ないと訳が分からなくなるゆえに視聴にけっこうなストレスがかかる映画』こと、メメント

 


ネタを割ってしまうと、レナードの犯人捜しはとっくの昔に終わっており、『メメント』はレナードが復讐を果たした後の物語なのです。

 


映画の冒頭でレナードはテディを殺します。

その場面から少しずつ時間が遡っていって、なぜレナードはテディを殺したのか?レナードの妻を殺した犯人は誰なのか?という謎ときストーリーになります。

 


テディは警官でレナードの私刑に協力した男でした。

レナードが復讐を果たしたことさえも忘れてしまうことを利用し、彼にマフィアのボスを殺させてドラッグの売り上げをかすめとろうとします。

その最中にテディとレナードはモメて、テディが『復讐は終わっている』という事実を腹いせまがいにレナードに明かすというのが映画のクライマックスになります。

 


事実を知ったレナードは、「復讐を終えない」ことを選択し、次に自分が追い詰める犯人がテディになるようメモを残す...という終わり方をします。

 


終盤のどんでん返しはさすがノーラン監督です。モノクロがカラーに代わる瞬間は鳥肌もの。

だけどしかし序盤中盤の焦らし方はものすごいです。

 

 

ノーラン監督はただ大衆受けする、売れるだけの映画はホントに作ってないし作る気ないんだろうなぁと安心しました。10年前にこの映画を作り、そして最新作がテネットですからね。

ここまで観客の置いてけぼりをいとわない代わりにすごいクオリティの映画を作る監督他にいるだろうか。私は知らない...。ノーラン監督はやっぱりすごい。

 


この作品でも、ノーラン監督が使ったツールは『時間』でした。

全作品に通じるキー概念ですね。

 


人間の裏と表

 


マトリックスのトリニティことナタリーのやり方がひどいです。

10分で記憶を失うレナードに対し、あらかじめ部屋中のペンを隠しておいた上罵詈雑言を浴びせる。

『ナタリーは敵だ』というメモをの残すため必死にペンを探すレナードをあざ笑い、記憶をなくしたレナードを笑顔で利用する。

本当に嫌なやり方でした。

 


メメント』という作品に通じて存在する謎は

一体だれが犯人なのか
いったい誰がレナードの敵で、誰がレナードの味方なのか

の二つになっています。

テディ、ナタリーは二人とも味方のような顔でレナードに接します。

しかし二人ともがレナードを利用しており、いわば敵です。

この作品の登場人物にレナードの味方はいないんですね。

レナードの妻も、レナード自身も、彼を裏切る存在です。

 


いったい誰が主人公の敵で、誰が味方なのか

という問いに対する

全員敵

という回答の鮮やかさにしびれました。

レナードの主観上では味方のキャラクターたちが本当はことごとく彼を裏切っているのです。

コインの裏表のように、見方によって彼らの姿は変わっていきます。

 


まとめ:『ノーラン監督』×(『マフィアの恋人』+『時間』+『人間の裏表』)=『メメント

 


メメント』から分かる監督のオブセッション

マフィアの恋人
時間
人間の裏表

でした。

前作『フォロウィング』の

権力者に支配される女
時間
人間の裏と表
名前のない登場人物

と非常に似てますね。

というよりほぼ一緒です。

 


あと2作でノーラン監督企画も終わりですが、ほぼほぼ固まってきましたね。

筆者はだんだんとノーラン監督お腹いっぱいになってきました。

 


教えてノーラン先生という企画にいくつか質問を挙げたので、答えてもらえるかドキドキです。

 


次は第5作目の監督作品『プレステージ』について書いていきます。

ではまたお会いしましょう。カミオモトでした。