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『フォロウィング』あらすじと感想。ノーラン監督の原点ここにあり【ネタバレあり】ノーラン企画④

クリストファー・ノーラン初代監督作品、『フォロウィング』見ました。

色濃く監督のこだわりが出ていました。

 


筆者が何より気になったのは、主人公の住むアパートのドアにバットマンのマークがあること....

そして主人公に「コインの裏表さ」という発言があったこと.....

 


ノーラン監督にバットマンのお話が来たのって、あのドアのマークが関係してたりするのでしょう。

監督がトゥーフェイスダークナイトの題材に選んだのは、『フォロウィング』のセリフが関係していたりするのでしょう。

胸熱です。

 


そして作中の時間が行ったり来たりするのも相変わらずでした。

ただいまノーラン監督作品を連続で記事にしていまして、今回で4本目になります。

もはや監督が時間をごちゃごちゃさせることに驚きはありません。

むしろダークナイトでよく時系列をごちゃごちゃにするのを我慢したな....と感心してしまう位です。

(覚えてないだけでダークナイトでも時系列トリックあったのでは?と心配になる)

 


あらすじ

 


(出典:https://www.youtube.com/watch?v=WaaihGzsMXI

 


尾行が趣味の主人公ビル。無職、作家志望の彼はいつものように男をつけていた。

しかし男はビルの尾行に気づいており、その男はビルを『自分の趣味』に誘ってきた。

男の趣味は空き巣だった。他人の家に入り、CDや写真、持ち主の人格に深く関わるものだけを盗む。

盗んだものから家主という人間をあれこれ想像するのが楽しいのだと。

 


ビルとその男、コッブはそれから一緒に空き巣に入るようになった。

ビルはある金髪の女性を尾行し、その女性を空き巣のターゲットにしようと提案するが...

 


クリストファー・ノーラン監督をテネットする

 


エイガジェルでは『クリストファー・ノーラン監督をテネットする』という題で、クリストファー・ノーラン監督のオブセッションを探る企画を絶賛進行しています。

[memo title="ちなみにオブセッションとは"]「妄想、脅迫観念」の意味。古くは悪魔や悪霊による「憑依」の意味ももつが、現代では「時に不合理とわかっていながらある考えや感情がしつこく浮かんできたり、不安なほど気掛かりになること」という精神医学・心理学的な精神の乱れを指す。

(出典:現代美術用語辞典 1.0)[/memo]

 


企画は、以下7作を

フォロウィング(1998)

メメント(2000)

プレステージ(2006)

インセプション(2010)

インターステラー(2014)

ダンケルク(2017)

TENET テネット(2020)

以下の順番で見ていくことで

↓④フォロウィング(1998)

↓⑤メメント(2000)

↓⑥プレステージ(2006)

インセプション(2010)

↑③インターステラー(2014)

↑②ダンケルク(2017)

↑①TENET テネット(2020)

「挟み撃ち作戦でノーラン監督のオブセッションを探っていくぜ」というそういう心意気のものです。

第一回『TENET テネット』について書いた記事はこちらから見れます。

第二回『ダンケルク』についてはこちら。

第三回『インターステラー』についてはこちら。

 


監督挟み撃ち作戦:現在の状況

 


現在は

第一回『TENET テネット』の考察

第二回『ダンケルク』の考察

第三回『インターステラー』の考察

が終わっている状況です。

 


テネットでは

時間
夫婦
SF

ダンケルクでは

時間
命の選別
明かされない真実

インターステラーでは

時間
親子
命の選別
死を選択する
世界を救う

が監督のオブセッション候補として出てきました。

それを踏まえてフォロウィングの考察に入りたいと思います。

 


ちなみに

 


筆者はノーラン監督作品のうち、

バットマンシリーズ
メメント
インセプション
インターステラー
ダンケルク
TENET テネット
フォロウィング

を鑑賞済です。

※筆者が鑑賞済みの作品の内容にも言及していきますのでご注意ください。

フォロウィングから見えてくる監督のオブセッション

 


権力者に支配される女

 


(出典:https://www.youtube.com/watch?v=WaaihGzsMXI

 


ビルはどうやら尾行していた金髪の女性を好きになったようで、コッブとともに空き巣に入ったあと、素知らぬ顔で女性と知り合いになります。

女性はマフィアのボスの愛人で、今はもうほとんど会わないのに別れさせてもらえない。昔撮った写真を脅しの道具に使われている...と打ち明けられたビルはまんまとマフィアの金庫破りに出かけ、それが彼の悲劇に繋がってゆきます。

 


……めっちゃ見たことある構図です。そう、テネットのデビッキ様とセイターですね。

デビッキ様も武器商人のボスセイターと別れたいけれど、ある弱味を握られていて別れることができない、という設定でした。

 


デビッキ様はセイターを殺るしかねぇとなるのですが、フォロウィングでは......

 


強権(というよりマフィアや武器商人といったヤのつく職業のボス)的な夫に束縛される妻、というのは確実にノーラン監督のオブセッションですね。

これは全くの想像であり確かめる術のないことですが、監督のお父さんはそういう束縛する人だったのだろうか、と思ってしまいます。

これはなかなか世のインタビュアーは監督に質問できないでしょうね。失礼すぎる。

 


うすうす気づいていてそれでもええんやと強行していますが、このオブセッションを探る企画、勝手に問いを立てて憶測で答えて終わるしかないというトンデモ企画ですね。

最後にノーラン監督に聞きたい10の質問とか作ろうかな。それを日本の映画配給会社やテレビに送ってみるとかどうでしょう。

よさげでは。

ちなみにノーラン監督企画が終わったら次は宮崎駿監督でシリーズを書きたいと思っています。楽しみだ。

 


時間

 


クリストファー・ノーランの十八番。ノーランといえば『時間』です。

今作ではダンケルク方式が取られていました。

ダンケルク方式

 


ダンケルクほどややこしくはないですが、時間を行ったり来たりして観客にストーリーの全体像を理解させていくスタイルですね。

油断したら話が分からなくなるやつ。

『ついてこれないヤツはどんどん置いてく』ノーランスタイルの究極系がテネットでしたね...(遠い目)

 


筆者はわりと「で、これは一体なんの話なの??」と早々に物語の目的を教えてほしい現代のエンタメ作品に飼い慣らされた人間なので、このスタイルはやや苦手です。

一時間ちょっと緊張感を持続させるのが難しい...。映画館で見ればまた別なのでしょうが。

 


やはり初監督作品ということもあり、エンタメ性よりはこだわり重視、全体的に監督のトガりを感じました。

フォロウィング』(1998)から20年以上の時が経っても『時間』というトゲを失わず、最新作では観客を置いてけぼりにしたノーラン監督。やっぱすごいぜ。

 


少し話はそれますが、とことん観客を置いていくときの監督の心理はいったいどんなものなんでしょうね。

あの『置いていかれ感』にハマる人間がいることを狙っているのか、単に監督が遠慮なく物語を書いてさらに遠慮せず映画にしたらああなるのか....両方ですかね。

これ本当に監督に聞きたいな~。 What do you think about that we can not understand details in your movie TENET for the first time?

 


人間の裏と表

 


なんでビルは尾行を、コッブは空き巣をするねん?という会話が出たとき、コッブは「コインの裏と表さ」と答えます。

彼ら二人とも裏も表もどうしようもない風味なのでダークナイトのハーヴェイとはまた違いますが、人間には裏と表があるという思想をずっと監督は持ち続けていることが分かります。

 


インターステラー』のマン博士も、『ダンケルク』のアレックスもそうでした。

『テネット』にはそういうキャラクターが出てこなかったですね。

 


制作順でいうと

フォロウィング』→(中略)→『ダークナイト』→(中略)→『インターステラー』→『ダンケルク』→『テネット』なので、『人間の裏と表』という命題については『ダンケルク』である程度監督の中で整理がついたのではないかなと思います。

ダンケルク考察の命の選別という章でそれとなく上記のことに触れています。よかったら読んでみてください~。

 


名前のない登場人物

 


監督が最新作テネットで主人公の名前を出さなかったことは、テネットの一作前である『ダンケルク』からの系譜だと思っていました(参照:名前の出てこない主人公)が違いましたね...!!

まさかの初監督作品から登場人物に名前をつけていなかったとは...。監督のこだわりゆるぎなし...。

 


しかし、これはどういう意図なんでしょう。

まず一つに、物語の進行上名前が必要のない人物には名前をつけないというのがきっとありますね。

フォロウィングの金髪の女性については、主人公のビル自身が『彼女の名前を知らないままに彼女を尾行していた』ということから、あえて彼女の名前を出す必要がないとしたのでしょう。

 


次にダンケルクでは、主人公は一兵士であることを強調するために、あえて名前を全面に押し出さなかったのでしょう。

ルフィやナルトのように特別な人間が主人公であるのではなく、ただ一兵士がダンケルクを生き抜いた過程を意図して撮ったのだと思います。

 


最後にテネットですが....

筆者、テネット一回しか見ておらずあまりよく分かりません...。

映画で「僕が主人公だ」的な台詞を主人公が言っていたのを覚えているので、そこから分析できそうだと思ってはいるのですが。

ここについてはテネットを再視聴したときに書き足したいと思います。

 


テネットの主人公については普通に名前があっても全然よさそうだと思うのですが、なんで名前がないのでしょうね。

あんな有能な人間をただ一般人扱いするのは無理があるし...

意外とワルなところもあったり、個性的なのに...別に名前あってもよかったのでは...

気になります。

 


ひとまず『フォロウィング』『ダンケルク』『テネット』から、ノーラン監督は登場人物の『名前』を既存の要素とは思っていないというのが分かります。

そして、映画に名前が出てこないだけであって本当に名前のないキャラクターがいるわけではないので、監督は演出上、あえてキャラクター名前を出さないことがよくあるんですね。

 


こういうところに監督が自分が作ったキャラクターの名前を出してやりたいというタイプの創作者ではなくて、『映画』全体の演出や構成を追求するタイプの創作者だというのが強く出ていると思います。 根っからの映画監督。

 


まとめ:『ノーラン監督』×(『支配される女』+『時間』+『人間の裏表』)=『フォロウィング

 


フォロウィング』から分かる監督のオブセッション

権力者に支配される女
時間
人間の裏表
名前のない登場人物

でした。

監督最新作『テネット』に被るところが多々ありましたね。

 


次回は第2回監督作品『メメント』について書いていきます。

メメントプレステージ、そしてインセプションで最後です。

テネット、ダンケルクインターステラーフォロウィングと、ついにクリストファー・ノーラン監督をテネットする企画も折り返しにやってきました。

 


インセプションの考察のあとには、『ノーラン監督に聞きたい10の質問』を作ってみようと思います。

そしてそれを映画関係の方や会社に送ったりして、どうにか監督の答えを知りたい......

 


礼儀を守った上で、ノーラン監督が「まさかここを聞かれるとは」と驚くような芯を食った質問を作れたらいいですね。

楽しみです。

 


それではまた次回お会いしましょう。カミオモトでした。