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『プレステージ』あらすじと感想。最悪の種明かし。ハリウッド半沢直樹編【ネタバレあり】ノーラン企画⑥

クリストファー・ノーラン第5作目の監督作品、『プレステージ』見ました。

最悪な方向へ進んでいく物語がすごく良い作品でした。

かなり好きだったので、ラストのラストの最悪のジャジャーン!については触れずに書いていきたいと思います。

 


映画の後味としては『パフューム ある人殺しの物語』に似ていました。

2作品ともとても上質な物語というところが共通していますね。

プレステージ、久しぶりに見た映画らしい良い映画でした。

 


あらすじ

 


完成された手品には3つの段階がある。

それは確認、展開、偉業(プレステージ)である。

 


観客に対し種も仕掛けもないことを証明し(確認)

その上で目の前のハトを消失させる。(展開)

再び消えたハトを出現させることで、初めてマジックは完成する。(偉業)

 


主人公のアンジャーとボーデンはある奇術師の元で下働きをしていた。

奇術師の助手をしていたアンジャーの妻は、ボーデンのミスが原因で水中脱出マジックに失敗し、事故死してしまう。

アンジャーの妻の死をきっかけに、二人は血を血で洗う復讐劇に足を踏み入れるのであった...

 


(出典:https://www.youtube.com/watch?v=99x64HQH6LM

 


クリストファー・ノーラン監督をテネットする

 


エイガジェルでは『クリストファー・ノーラン監督をテネットする』という題で、クリストファー・ノーラン監督のオブセッションを探る企画を絶賛進行しています。

[memo title="ちなみにオブセッションとは"]「妄想、脅迫観念」の意味。古くは悪魔や悪霊による「憑依」の意味ももつが、現代では「時に不合理とわかっていながらある考えや感情がしつこく浮かんできたり、不安なほど気掛かりになること」という精神医学・心理学的な精神の乱れを指す。

(出典:現代美術用語辞典 1.0)[/memo]

 


企画は、以下7作を

フォロウィング(1998)

メメント(2000)

プレステージ(2006)

インセプション(2010)

インターステラー(2014)

ダンケルク(2017)

TENET テネット(2020)

以下の順番で見ていくことで

↓④フォロウィング(1998)

↓⑤メメント(2000)

↓⑥プレステージ(2006)

インセプション(2010)

↑③インターステラー(2014)

↑②ダンケルク(2017)

↑①TENET テネット(2020)

「挟み撃ち作戦でノーラン監督のオブセッションを探っていくぜ」というそういう心意気のものです。

第一回『TENET テネット』について書いた記事はこちらから見れます。

第二回『ダンケルク』についてはこちら。

第三回『インターステラー』についてはこちら。

第四回『フォロウィング』についてはこちら。

第五回『メメント』についてはこちら。

 


監督挟み撃ち作戦:現在の状況

 


現在は

第一回『TENET テネット』考察

第二回『ダンケルク』考察

第三回『インターステラー』考察

第四回『フォロウィング』考察

第五回『メメント』考察

が終わっている状況です。

 


テネットでは

時間
夫婦
SF

ダンケルクでは

時間
命の選別
明かされない真実

インターステラーでは

時間
親子
命の選別
死を選択する
世界を救う

フォロウィングでは

権力者に支配される女
時間
人間の裏と表
名前のない登場人物

メメントでは

権力者に支配される女
時間
人間の裏と表

が監督のオブセッション候補として出てきました。

それを踏まえてプレステージの考察に入りたいと思います。

 


ちなみに

 


筆者はノーラン監督作品のうち、

バットマンシリーズ
メメント
インセプション
インターステラー
ダンケルク
TENET テネット
フォロウィング
プレステージ

を鑑賞済です。

※筆者が鑑賞済みの作品の内容にも言及していきますのでご注意ください。

 


プレステージから見えてくる監督のオブセッション
構成美の追求

テネットを見たときからこの人はヤバいな…と思っていましたが、やはりノーラン監督の『映画構成の完成度』を追求する姿勢はものすごいです。

おそらく監督にとって映画はただのエンターテイメントストーリーではなく、構成やシナリオテーリングにさえも一貫したテーマを持たせて完成させるものなんだと思います。

とくに『テネット』は俯瞰すると映画そのものが一つのオブジェになってるような完成度の高い作品でした。
近年見た中では『スリー・ビルボード』が同じような印象を受ける映画でしたね。
こういう一筋縄ではいかない映画ほんとに大好きです。

そのメタ的なこだわりはプレステージにも表れていて、この作品は執拗なまでに『確認』『展開』『偉業(プレステージ)』の繰り返しでストーリーが進んでいきます。

例えば終盤では

アンジャーのステージ(確認)
アンジャーの死(展開)
アンジャーが再びボーデンの前に現れる(偉業)

 


獄中のボーデン(確認)
ボーデンの死刑執行(展開)
ボーデンが再びアンジャーの前に現れる(偉業)

と、アンジャーとボーデンはプレステージの応酬を行います。

そしてこの最後のマジックに関してだけは、映画のラストでそれぞれ種明かしが行われます。

その種明かしが本当に最悪でこのオチが好きな人は本当に好きだと思います。私はめっちゃ好きでした。

 


あくまでSF

 


テネットの『くぐると時間を逆行できるようになる回転ドア』も今回出てくる『科学者テスラが発明したある仕掛け』もなんですけど、どう考えてもファンタジー現象を、絶対に魔法や妖精の仕業にしないところがクリストファー・ノーラン監督のこだわりだと思います。

テネットではエントロピーインターステラーでは相対性理論プレステージではもはや『発明』という説明だけ......

それでもにノーラン監督は頑なにサイエンス・フィクションの体を貫きます。

 


いっそ監督にはド直球のファンタジー映画を撮ってほしいですね。
クリストファー・ノーランがファンタジーを撮れば絶対面白いものが出来上がると思うのです。
リアル・ファンタジーみたいな新ジャンルが誕生するかもしれない。

 


本編でのテスラの登場には、今の世界では絶対にありえない事象をテーマに映画を撮りたいのに絶対にリアリティを失いたくないという監督のジレンマをしみじみ感じました。

ノーラン監督って本当に面白い作家ですね。

 


まとめ:『ノーラン監督』×(『構成』+『SF』)=『プレステージ

 


プレステージから考えるノーランのオブセッションは、

構成
SF

になりました。

プレステージは最後のオチから話ができていったんだろうなという作品でした。

最後のオチ×確認展開偉業の繰り返しで組み立てられたパズルのような作品です。

映画の構成に萌えを感じるような人にぜひ見てもらいたいですね。

 


次はインセプションについて書いていきます。
ノーラン企画第7回目、取り上げる作品として最後の作品になります。

それではまたお会いしましょう。カミオモトでした。