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ゼメキス監督が描く彼の世界【マーウェン】感想

 

2018年にアメリカ、2019年に日本で公開された映画『マーウェン』感想です~

 

監督・主演

監督は我らがロバート・ゼメキス。主演はスティーヴ・カレルさんです。

ロバート・ゼメキス監督はバック・トゥ・ザ・フューチャーの生みの親。

そしてフォレスト・ガンプ、ザ ウォークなど数々の名作を撮った名監督でございます。

 

主人公マークを演じたスティーヴ・カレルさんは顔とおそらく背丈がロビン・ウィリアムズによく似ていました。

オーキャプテン、マイキャプテン。

 

スティーヴン・スピルバーグの弟子ともいわれるゼメキス監督ですが、彼の映画はたしかにスピルバーグの作品と通ずるところがあります。

以前、町山智浩さんのラジオでスピルバーグ映画に共通するテーマは「弱い者を守って逃げる」だと紹介されていました。

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たまむすび神回です。

映画評論の意味・すごさを感じると同時に、改めてスピルバーグが、映画が好きだという気持ちになるお話をされています。

町山智浩さんのたまむすびは、モハメド・アリの回と合わせて心に刻んでます。

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スピルバーグ監督の映画に共通するテーマが「弱い者を守って逃げる」だとすれば、

ゼメキス監督のテーマは「普通じゃない人」だと、今回のマーウェンを見て思いました。

 

「普通じゃない人」を描くゼメキス監督

バック・トゥ・ザ・フューチャーでは今どきの若者マーティンと変わり者の発明家ドクの友情が描かれ、ザ ウォークではワールドトレードセンターを文字通り命がけで綱渡りしようとする変人が、そしてフォレスト・ガンプでは変わり者のフォレストの半生が描かれています。

ドクは分かりやすく「近づいちゃいけません」と言われる怪しい大人、フォレストは人に「自分たちとは違う」と思われ続けたような人間です。

ワールドトレードセンターを命綱なしで渡ろうとする人間は、ジェットコースターでさえあまり乗りたくない人間からすれば、ただクエスチョンマーク、なんでそんなことをという批判もなくなぜだ...いやわかるような気がするけど…怖すぎるじゃん…と途方に暮れてしまうような「自分とは違う」人間です。

 

ゼメキス監督は「普通じゃない人」を描きます。

彼のフィルムを通してみる普通じゃない人は、ただ理解できない言動をとる人間ではなく、マーティンの親友でありジェニーを愛する人、そして偉大な芸術家です。

普通とは違うことと彼らの美点は、ただ平行して両方が存在しています。

 

 

空想の街『マーウェン』

今作の主人公マーク・ホーガンキャンプは、ミニチュア人形の写真を撮り、その写真でストーリーを紡ぐ芸術家です。

空想の街『マーウェン』では、自分モデルの人形キャプテン・ホーギーと美女人形が暮らし、ナチスの兵士と日夜戦いを繰り広げています。

 

元々彼は絵描きでしたが、バーで暴行を受けたことで脳に障害が残り、絵を描くことができなくなります。

暴行を受けた原因は、男性である彼がヒールを履いていたことです。

 

マークは暴行のトラウマに苦しみ、薬物に依存しています。

暴行犯を象徴するナチス、実世界でマークと関わる女性たちをモデルにしている美女兵士の他に、空想の街『マーウェン』には緑色の魔女がいます。

緑色の魔女・デジャは、ときどきキャプテン・ホーギーの前に現れて甘い言葉をささやくファムファタール的存在です。

 

 

映画では、主人公マークが現実の世界で生活している様子や、周囲の女性たちとの深いような浅いような現実的な繋がりが描かれます。

実生活がいつのまにかマーウェンの世界とリンクし、そしてまた現実に戻る。その繰り返しの映画です。

マークが写真をとることで紡いでいるストーリーが名匠ゼメキスによって鮮やかに映像化されています。

 

加害者の前で、被害者として答弁すること

マークは自分を暴行した男たちの裁判に出廷し、答弁することを求められます。

ヒールを履く男なんて殴ったって問題じゃないと考えているような男たちの前にもう一度立つということ。求刑をして恨みを買うということ。それでも、彼らの罪は軽くないと主張すること。

マークは恐怖し、葛藤します。

 

 

ヘイトクライムによって人生に大きな痛みを負った彼は、現実の世界で隣人から受けたささやかで確かな愛情を元に空想の世界で闘います。

 

彼が最終的にどういう行動をとったのか、ぜひ映画で確かめてみてください〜

 

 空想を愛する人たち

この映画で描かれているのは、空想の世界がいかにマークと密接であるかということです。空想の世界を必要とする人間にとって、それがどういうものなのか。

その部分がものすごく大事に描かれています。

 

言葉にすると色々なものを取りこぼしてしまうとホラーの巨匠スティーブン・キングが言っていましたが、まさにその通りで、ゼメキス監督がマークの世界を描いているさまには、同じものを宝物にしていた人間からのラブ・コールに溢れてました。

この作品への低評価を超える、この作品が描き出した唯一のものをぜひ見てみてほしいな~と思います。

そういう意味では、エンタメパワーカウンターが振り切ったゼメキス監督がともかく君に伝えたいことを書いたラブレターみたいな作品です。ゼメキスファンはとりあえず観て全然いいやつ。

 

 

 今までこういう作品を見たことがなかった…と思ったけど

あれに似てます、ジョニー・デップ主演の『エド・ウッド』。

そうくるならばマーティン・スコセッシ監督の『ヒューゴの不思議な発明』。

あの感じです。

 

ラストはさすが巨匠で、エンタメカウンター全開で見事に締めています。

監督やっぱすげえとなりますので、ぜひご鑑賞ください。

 

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