『トリック劇場版』あらすじと感想。笑っていい狂気【ネタバレあり】
こんばんは、カミオモト(@kamiomoto)です。
ミッドサマーと共に話題になっていた仲間由紀恵・阿部寛主演ドラマ『トリック』の劇場版一作目を見ました。
金曜ロードショーあたりで見たときは感じなかったですが、改めて見ると確かに設定がエグいです。
小4くらいだったので、まぐわいと言われても意味が分からないままでしたね。
あらすじ
売れないマジシャン山田奈緒子(仲間由紀恵)は、糸節村の青年団から『神を演じてほしい』という依頼を受ける。300年に一度災いが訪れるという伝承に怯える村人たちを安心させてほしいと大金を渡され、山田はその依頼を受けることにした。
同日、物理学の教授上田次郎(阿部寛)は著書『どんと来い!超常現象』の取材のため、糸節村を訪れる。
青年団の依頼のとおり神を装ってマジックを披露した山田。しかし、他にも神を名乗るマジシャンが集結していたため、真の神を見極めるためのバトルに参加しなければならなくなった。
偽物だとバレれば神を信仰する村人たちに殺される。
上田の力を借りながら、神001、神002、神003との対決を切り抜けるが...
ギャグテイストで語られるヤバイ山村
今作の舞台となる糸節村ですが、実体はほぼカルト集団。
神を騙る人間は不敬だから私刑するし、どうみても壮年の男女が青年団を名乗っています。テレビで流れるのは暴れん坊将軍のみ。
村は近親相姦で成り立っており誰が誰の血縁かも分からない状態で、菊姫という最後まで正体の分からないお婆さんが絶対的規律である信仰を取り仕切っています。
外界との情報隔絶、規律は宗教、私刑アリのコンボは怖い
状況はホラーですが登場人物総出で小ネタを仕込んでくるので全然怖くないし楽しんで見れます。
作品としては全然ホラーじゃないギャグサスペンス。
孤立した山村のヤバさをもっと味わいたかったな、と思うくらいでした。
悲劇と喜劇、全方向にトンデモ展開
青年団の男女の間に子どもが出来ましたが、信仰を取り仕切っている菊姫というお婆さんが「その子どもは不吉だから産んではならない」と言いました。
子どもを産んでも狂信的な村人たちに殺されてしまう。そのため、青年団の二人は生まれた子を洞窟の中で育てます。その子は琴美と名付けられました。
琴美ちゃんの両親(青年団の二人)は、琴美ちゃんを真の神様として村人に認めさせる計画を立てていました。
そのための捨て駒として神001、神002、神003、山田奈緒子は集められたんですね。
山田の奮闘により琴美ちゃん神格化計画は失敗。
琴美ちゃんたち家族は、信仰の狂気によって悲劇的な最期を迎えます。
その悲劇を引き起こした菊姫、山火事の消化方法がトンデモでした。
ストーリーの笑えなさ、それを無視して進む山田と上田によるコメディ。鬼束ちひろの『月光』が、琴美ちゃんの人生に寄り添います。
コメディ色の強めの手塚治虫っぽい
今作は琴美ちゃんのお父さんとお母さんの人物設定になんとも言えない悲哀がありますね。
暴れん坊将軍しか流れない環境で育ち、40代を過ぎているだろう風貌のわりに服装や言動はとても幼い。その二人が唯一の娯楽としてのまぐわいを行い、子どもを授かる。
大人の身体に入った子どもが、村の規律に抗って我が子を守ろうとする。
なんともいえない悲しい話です。
後味が手塚治虫に似てるなーと思いました。