『ゲットアウト』あらすじと感想。本当の恐怖は彼女の瞳【ネタバレあり】
こんばんは、カミオモト(@eigagel)です。
にわかに話題を集めたホラー映画『ゲット・アウト』見ました。
怖いというより悲しかったですね。
ミッドサマーもそうらしいですが、ゲットアウトは紛れもない失恋映画だと思います。
あらすじ
クリスは黒人の青年写真家。恋人のローズは白人です。
週末にローズの実家へ挨拶に行きます。
「両親は差別主義者ではない」と彼女は言いますが、黒人の彼氏は白人の彼女の実家に行かないほうがいい。クリス自身も、クリスの友人もそう思ってました。
ローズの両親はクリスを見て眉を顰めることはありません。
しかし、寛容な振る舞いがわざとらしく、むしろ居心地を悪く感じるクリス。
彼らは黒人のジョージナとウォルターをハウスキーパーとして雇っています。
ジョージナとウォルターに話しかけると、二人とも様子がおかしい。
ローズの家を賞賛し、笑みを浮かべる彼らの目は何かを訴えるようにクリスを見ていました...
多層的なストーリー
ロマンス、コメディ、SF、ドキュメンタリズムをサスペンスホラーで包んだような映画でした。
早々にネタを割ってしまうと、主人公の彼女ローズは白人の脳を移植するために黒人を誘拐する一家のメンバーだったのです。
老化や病気で衰えた身体を捨てて、黒人のたくましい肉体を手に入れたいというトチ狂った顧客たちに身体と手術を提供しています。金銭を受け取って。
彼らの言い分は、「自分たちは黒人に憧れている。だから彼らの肉体が欲しいと思うんだ。これは差別じゃない」なんですよ。
憧れていようがなんだろうが、身体を奪っていいと考えている時点で下に見てるだろ
今作のSF的要素
主人公クリスの肉体を見定めに集まった白人たちは全員狂っているのですが、狂った彼らが当然としている『他者の身体を使ってなお、脳が自分なら自分である』という感覚はもはやホラーというより哲学、SF的問いになっていて面白いなーと思いました。
動機は間違いなく他者を軽んじる差別心理で、
行為はサイコホラーで、
結果はサイエンスフィクション的問いを生んでいる。
さらに物語としては
クリスが抱いていた愛情や信頼はローズに通じないという切なさ、
クリスの人間性はローズに理解されないという分かり合えなさがあり、
だから彼女の実家には行かない方がいいんだっていうコメディでもあるんですね。
差別心理を描く社会派映画でありながら、サイコホラーでSFで恋愛ものでコメディとよく混ぜたな~という作品です。
監督の次の作品『アス』
ゲットアウトの
- 動機がレイシズム
- 行為がサイコホラー
- 結果がSF
というのは意識して作られていると思います。
ジョーダン・ピール監督の次の作品が『アス』なんですけれども、そこでも非常にSF的展開から社会に対する疑問を投げかけています。今作と同じようにガワはホラーですけどね。
コメディ出身の監督がこんなにも多層な物語を作っているということで、笑いはものすごく知的な構造物なんだろうと改めて感じました。
本当の恐怖は彼女の瞳
今作で一番心に刺さったのは、主人公クリスがローズを信頼して愛していたことです。
どれだけ彼が愛と信頼を伝えても、ローズの心には何一つ届かない。
信頼する人に人間として見てもらえないことがこんなに悲しくて虚しいとは。
この作品で一番心に残ったのはそこでした。
すごい映画です。